2016.10.18(最終更新日: 2016.10.27) 編集

RICOH THETA S で撮影した動画を、公式アプリ以外でスティッチする

川嶋 光太郎川嶋 光太郎

前置き

一部では前置きが長いことで有名なので、適当にすっ飛ばしてください。ここ書いてるときが一番楽しい←

RICOH THETA Sのデメリット

RICOH THETA。日本でVRが話題になる前に、時代に先駆けて出てきた「全天球写真の撮れるカメラ」である。2代目になるRICOH THETA m15では、短いながらも動画の撮影に対応し、現行のRICOH THETA Sでは、30分近い動画まで対応した。

ボタン一つでVR動画が撮影でき、しかも簡単にスマフォで視聴できるRICOH THETA Sは、世の中に少なからず衝撃を与え、その後、様々なメーカーからVRカメラが発売されるようになる。

しかし、このTHETA。先駆けの宿命なのか、いささか画質が悪い。今では4Kで撮影できるカメラが多いというのに、未だFullHDにしか対応できていない。しかも、あまり処理性能が高くないのか、記録される動画ファイルの仕様はH.264の16Mbps程度。仕方のないことではあるが、とはいえやはり、できるだけ良い画質で撮影したいものだ。

HDMI出力を利用した、外部レコーダー記録への挑戦

そんな中、このTHETA SはHDMI出力に対応してることを思い出す。出力仕様は公開されていないので、わからないのだが、少なくとも、ここから出力したものを外部レコーダーで記録できれば、16Mbpsという低ビットレート圧縮の影響を受けずに済むのではないかと考えられる。

これでTHETAでも高画質な全天球動画が撮れる! と思っていたのだが、しかしそうは問屋が卸してくれない。THETA Sで記録される動画は、Dual-Fisheyeといって、1つの動画ファイルの中に前後2つのレンズで撮った映像がまとめて記録されているのだが、これを再生可能な状態「正距円筒図法」に変換するには、RICOH公式の変換・再生アプリを用いる必要がある。実はこの公式アプリが曲者で、悲しいことに本体内で記録されたファイル以外は変換してくれないのである。外部レコーダーで記録したものはもちろん、Dual-Fisheye状態で編集を加えたものでも、変換エラーが返ってきてしまうのだ。辛い。

この問題についてしばらく悩んでおり、いい加減諦めかけていたわけだが、先日、Vook主催のVRイベントが開催されるということで「もしかしたら、いい手を知ってる人がいるかもしれない!」という期待に胸を膨らませ、参加してみたところ、一筋の希望の光を見つけたのだ。今回は、その「希望の光」を使って、実際に変換してみた記録である。

Kolor Autopano Video Pro VS RICOH THETA S

その希望の光とは、Kolor社のソフトウェア「Autopano Video Pro」である。複数台のGoProで撮影した映像を360-degreeなものに変換(スティッチ)してくれる、というものだが、Kodak PixPro SP360を前後に合わせてDual-Fisheye状態にしたものの変換に対応しているとのことで、イベントから帰ってすぐに試してみたのである。

しかしやはり物事は一筋縄では行かなかった。同サイトのFAQを確認してみると、なんと「RICOH THETAには対応してねーから!」と明言されているではないか! 絶望である。

とはいえ、ここで諦めたら意味がない。少なくとも、Kodak PixPro SP360のDual-Fisheyeでスティッチしたという事例があるのだ。最悪でも、元のデータをそれと同じようなデータにするなどという方法で対応ができるかもしれない。「Autopano Video Pro」と「THETA」とをキーワードにWWWの世界に飛び込んだ。

すると、1本だけ、RICOH THETAの公式アプリによるスティッチと、Autopano Videoによるスティッチの比較をしている動画を発見した。その名もまさに「Ricoh Theta S – Ricoh app vs Autopano Video」である。間違いない、手はあるのである。そして、同じことを考えてこの動画に辿り着く人もいるわけだ。その人はコメントで投稿者に質問をする。投稿者はその人に返信をする。素晴らしい。コミュニケーションだ! そして、長年の謎もここですべてが解決するのである。

準備するもの

さて、いい加減本題に入ろう。

必要なものは下記だ。

これだけである。Autopano Video Pro, Autopano Proはインストールしておこう。また、Theta Templateは解凍して、中に「theta.pano」というファイルがあることを確認する。

スティッチ手順

さて、準備が整ったら、実際にスティッチしてみよう。下記の通りにやればなにも難しいことなく変換されるはずである。

1. Autopano Video Proにファイルを読み込む

ファイルを2つ読み込んだ状態

Autopano Video Proを起動し、表示されるウインドウに、上記「準備するもの」で用意した「2つのDual-Fisheyeファイル」をドラッグ・アンド・ドロップしよう。それだけでファイルが読み込まれて、上記の画像のような状態になるはずだ。2つのファイルが見えているが、コピーしたファイルを読み込ませているので見た目は同じはずである。

2. Templateを使用して、スティッチする

スティッチが行われた状態。上下が逆になっている…

次にスティッチだ。ツールバーの中から「Stitch」と書かれているアイコンをクリックし、Stitchウィンドウを表示しよう。そこの一番上に「Stitch as」という項目があるので、その中から「Template panorama」を選び、すぐ右下の「Stitch」ボタンを押す。すると、ファイル読み込みダイアログが開くので、上記「準備するもの」で用意した「theta.pano」を選択して開こう。すると「Realtime preview」というウインドウが追加され、そこにスティッチされた状態の映像が表示されるはずである。

おそらくここでスティッチされた画像は、上下が逆のものになっているかもしれない。原因はTemplateを作った人が、THETAを上下逆さまにして記録したデータを元にTemplateを作ったからなんじゃないかなーと思うのだが、気になる人は(気にならないわけないけど)、「Realtime preview」ウインドウの左下にある「Edit」ボタンをクリックし、Autopano Proを立ち上げて、そちらで修正しておこう。Autopano Proの使い方は本題ではないので、ここでは省略する。

3. 書き出し

今回行なった書き出し設定

重要な項目はここまでである。後はもう書き出すだけだ。Stab→Compute motionをやると、天頂計算をしてくれるっぽいのだが、まぁそれもここでは置いておこう。とりあえず書き出しだ。

書き出しも簡単である。ツールバーの中から「Render」というアイコンをクリックして、表示されるウィンドウの設定を弄るだけだ。本来ならH.264で書き出したいのだが、俺の環境ではなぜかH.264での書き出しができない(エンコーダーが初期化できない、といわれる)ので、今回はProRes422HQで書き出すことにする。

スティッチ性能はいかほど?

スティッチラインが見える…

ぶっちゃけた話をしてしまうと、上記の画像を見ても分かる通り、あまり性能は良くない。とりあえず再生してみると、このスティッチ部分が顕著にみえてしまうのだ。しかしこの辺はむしろ、変換特性と考えて、被写体はもっと遠くに置くように気をつけることで対応できるかもしれない。

画質はいかほど?

全く同じ構図ではないので比較しづらいが、あまり差はない

(本来、同じ環境で記録したもので確認すべきだが、THETAのHDMI端子が本体下部に存在してる関係で、据え置きすることができず、THETA内臓は据え置き、外部レコーダーは手持ち、という状況になってしまったのは申し訳ない。)
そして肝心の画質についてであるが、上記の画像を見ていだければ分かるだろう。ぶっちゃけ、大差ないのである…これは、これは本当に悲しい。

Dual-Fisheye状態のときでは、たしかに両者に差を感じるのだが、ここまでいじってしまうと全くもって差がわからないのである。色味については、THETA内蔵の方がコントラストが高く、色が潰れてしまっているな、と感じるので、その辺でのアドバンテージはあるのだが、ディティールの面ではほぼ差がないように見える。そもそもFullHDよりサイズの小さい元データ(映像が記録されている部分はFullHDの中に2つの円でクロップされている)を、FullHDに「引き伸ばしてる」わけだからディティールが潰れてしまうのは仕方がないな、とは思っていたが、ビットレートを挙げた程度ではそこまでディティールに差が出るようなことはないようだ…

まとめ

RICOH THETA S は手軽にVR録画ができて、静止画もきれいで、非常に便利ではあるが、動画に限っていうのであれば、やはり趣味の範囲から抜けることはないだろう。HDMI端子がつき、外部レコーダーへの記録も可能になったとは言え、解像度そのものに変化はないので、なんとかスティッチ出来たとしても内蔵記録を公式アプリで変換したものとあまり差が生じないようだ。

ただ、HDMIからは、非圧縮YCbCr形式で出力されているので、内部記録のyuv4:2:0記録に比べると、色情報は多く残ってくれていると考えられる。実際、色味の面で言えば、外部レコーダーをAutopano Video Proで変換したものは内蔵データに比べてグラデーションが優しくなっているようにみえる。

ひとまず、THETAの公式アプリ以外でスティッチを行うことができることはわかった。Autopano Video Proは有料アプリ(しかもお高い)なので、本気でやるなら買っても良いかもしれないが、THETAではどのような手を使ってもあまりメリットはないかもしれない。ディティールにこだわるなら、やはりTHETAではなく、別の高解像度が売りな製品を利用するのが良さそうだ。そしてどうしてもTHETAしか使えないのであれば、外部レコーダーで記録して、多少なりとも色編集はしやすくするのがいいかもしれない。しかしそんな苦労をしてまで得られるメリットは大きくなさそうだ。諦めてライトユースに限定しよう…

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2016.10.18(更新日: 2016.10.27) 編集

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